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猫柳草庵

猫柳の隠れ里にある、庵です。 よろずのことを語るブログです。 政治やら思想やら宗教の話もするから苦手な人はスルーしてね。

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映画雑感 ミッドサマーとジョーカー

基本的に映画嫌いなんですよ、帯状疱疹やってんで、でっかい音に耐性がなくなってましてね。って言うか、元から大音量空間が嫌いなんで、子供向けアニメ映画とかも、映画館で見るとグラグラしてダメんですよね。
なんで、家とかで観てですね。
んー、映画嫌いっていうより、映画館が嫌いなんだな。音量調節できないから。



 ジョーカーは、あれは、まぁ、ハムレットだな。現代のハムレット。
 ハムレットと多感な年頃の青年の共感、なんつーのははるか昔からのおきまりの議題なんで、俺はジョーカーだ、これは俺のことを書いているんだー、なんつーやつはハムレットの昔からおるってだけの話だね。
 もしくは感情表現に障害を抱えた反省のしないラスコリーニコフか。



 
  でー、ミッドサマーなんすか、個人的にはソウシリーズを真顔で観れるぐらいグロ耐性が強いんで、大丈夫でした。はっきり言えば、寝る前の「死んだらどうなるんだろう……。宇宙の果てってどうなってるんだろう。永遠ってもんがあるとしたら、それはそれで怖いし、意識が全くのゼロになるのも怖いなぁ」と思う方がよっぽど怖い。子供の頃から、これをやっちゃって、時々戻ってこれないぐらい怖い気持ちになる。これ、わかる人いるかな。
 
 で、みんな、あれを、主人公たちが「異文化コミュニケーション」をしていると思い込んでるんですが、あれですよ? アングロサクソン系の人って、あのミッドサマーの文化が地続きにありますからね? って話で、これ、「アーリア学説」まで辿れる、怖い話ですよ? ってことがいいたい。てか、そっちのが怖い。

 異文化コミュニケーションというより、文化的なタイムスリップですね。主人公サイドからしたら。
 本当の怖さはここで、キリスト教や近代思想を受け入れて、文明的に生きている人々の文化の根底に、これをあっさりと否定する信仰形態がある、しかもそれが文明の基礎を作っている、というところです。

 これが心の底から不快だと思うなら、感覚が「北極星」側ということです。これでわからない人にとっては難解というより、グロいだけの映画なんで見る価値なしです。

 ようは、白夜の真昼間に夏至の祭りなんてしてるんだから、この人ら太陽系信仰なんだわ。
 
 で、これ、主人公が追い詰められてこうなっているっていうより、この文化に徐々に馴染んでいくわけです。つまり、目覚めていく過程ね。でも、これ洗脳とかじゃないよ。先祖返りなんだよ、これ。主人公にとってのあるべき世界がそこにあったんだね。彼女の中であるべき本来の「生命のサイクル」を発見してしまったんだよ。
 死ななきゃならん七十二歳の老婆が崖から落ちると鳥が飛び上がる、っていう神秘的な描写があるよね? 
 つまり、ソウいうことだよ。
 ゾロアスター教だと本来は鳥葬だからね。
 で、ゾロアスター教って鳥が重要な役割をはたしていて、人には霊鳥の守護霊がついていて、死ぬとそれが天に返っていくと言われている。それが仏教とともに日本に入ってきて、それが日本のお盆の原点と言われている。
 つまり、お婆さんは成功したから、鳥が羽ばたいてったんだね。
(ビョルンの方は失敗したんで、司祭にトドメをさされる)

 クマ殺すのも一緒で、要は、ミトラの神像が牛を屠殺しているのと同じことをしている。
 生命の解放であり、その生命を生贄に着せて輪廻させる儀式だね。
 最後は神聖な炎(太陽の暗喩)で燃やしておしまいおしまい、主人公は花の女神になって大団円。
 花っていうのもこれまた、四季の流れや、生命のサイクル、太陽をイメージさせるよね。


 だから、ミッドサマーの村の人は、白い服を着ているわけだな。根っこがゾロアスター教とかと同じところにあるからね。マスクしてたら完璧にあれだね。

 日本風でいうなら、今だに古代の祭りをする集落が日本にあって、トラウマを抱えた女主人公が「私は卑弥呼ー」っていうようなもんだ。
 
 で、どうもこれ、巨人ユミルの祭りっぽいんだよね。
 まぁ、北欧神話の世界だからね。
 ただ、実際の祭りがここまで残酷なのかどうかは知らぬ。
 で、巨人ユミルっていうのは、こちらでいうと閻魔大王ね。
 古代インドイランのヤマが源流。ゾロアスター教の経典「アヴェスター」に出てくるイマでもある。
 つまり、インドイランの共通神であり、キリスト教を受容する前のアーリア系の人々の宗教の内部の存在でもある。
 彼は人類で初めて死んだ神で、つまり、そこから生命のサイクルをはじまったわけだ。
 つまり、原始共産社会でもなく、ウホウホいってる原始時代でもなく、ミッドサマーの価値観こそ、ある種の民族の「文明の基礎」を作っているわけだよ。
 そして、その文明はインドとイランという二つの文明大国につながっていく。

 言ってしまえば、アーリア学説って、インドを支配していたイギリス人が最初に提唱したもので、インドとイランとヨーロッパ特に言えばアングロサクソン系の言語って似てね? っていう事から始まるの。で、実際記号学や考古学をやっていううちに、インドイランとヨーロッパの一部諸民族の文化が似ていることがわかっていく。
  そして、記号的学や考古学でいうと、原始時代のブルガリアやルーマニアなどで、卍模様が多く出土するわけ。
 つまり、アーリア人はものすごく広範囲にいるんだ! っていう発見があったわけ。
 見た目違うけど、仲間だ! っていうね。
 で、完璧に色めき立ったのは、シュリーマンがミケーネ文明の遺跡から卍模様の掘られた物を発見したこと。(個人的にこの発見は怪しいと思うんだよね。シュリーマンってロシア人の奥さんもらってからやたらと金回りよくなるし、商売人が突然トルコ行って遺跡掘るのも不思議。で、その出土品が今、ロシアのプーシキン博物館で観れるんだけどね。当然、ドイツとトルコと所有権を争っている)

 で、もっと言えば、旧約聖書はセムハム語族のヘブライ語が基礎となっている。
 キリスト教はどう考えても、ユダヤの宗教が基礎となっている。
 で、これに完璧にマウントを取れるのが、このユダヤ教に大きな影響を与えているのが、ゾロアスター教だってことだ。
 つまり、ユダヤ民族に上位に立てる証拠がアーリア学説なわけ。
 同時にこれが、当時の 植民地支配や近代化に伴う宗教運動やスピリチュアリズムに取り込まれていくわけ。
 雑にいうとさ、だって、卍模様拝んでいる地域は同族ってことでいいんだから、こんなに植民地支配にとって都合のいいことはない。
 ただ、これが現代では、似非科学と言われている。っていうか、確かにインドヨーロッパ語族なんだろうけど、諸言語の派に広がりがありすぎて、いくらなんでもみんな英語やドイツ語の仲間っていうのは無理があるよね。

(ですが、アーリア学説的な世界観、こーれがまた、トールキンに注がれ、今のファンタジー世界が構築されているわけだ。トールキンと民族主義って根深い問題がある。
 で、ニーチェもまた、ザラストラかく語りきっていう本を出す。
 キリスト教の熱心な親が、魔法使いが出てくるような本を読むな! っていうのにも深〜い訳があるのだ)


 なもんで、ただのグロ映画ではないのですよ。

 で、怖いのは、この映画の感想とかで「この世界観は合理的かもしれない」とか怖いこというやつが出てくることな。
 っていうか、これこそこの映画を撮ったやつの狙いだったら本当にやだよね。
 同時に映画っていうのはすんごく金がかかる訳でさ、この映画のパトロンの狙いってなんだろうねって話。

 と、いうのも、この映画、基本的に映像が綺麗なんだよね。青空の下の大草原で白い民族衣装を着た集団がいてね、グロいシーンも鮮やかな色合いで撮られていて、どこか不思議な印象を与えているよね。そして、所々に神秘的な演出も入る。
 つまり、ウィッカーマンと違って、村人を嫌悪する対象と描いていない気がするんだよね……。
 つまり、映画監督の目線が、どちらかといえば村人側にあるっていう怖さがある。
 
 頭の良い人ならわかると思うけど、私がずっと喋ってきたことって、第二次世界大戦の時にドイツ人の一部がはまっていたあの思想の源流がここって話ですからね?

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